税理士の体験談ですが、
「私の家庭にかかる相続税をざっくりと計算してみたんだけど、これで合ってますか?」
といった内容の質問を受けることが多く、相続税を計算している方からたくさんの相談を受けてきたとのことでした。
実際税理士が内容をチェックすると、最終的に自分たちにかかるであろう相続税の1.5倍〜2倍ぐらい多く見積もって計算していることが多いようです。
なぜ自分たちにかかるであろう相続税を1.5倍〜2倍ぐらい多く見積もって計算されているのかというと、相続税を計算するための手順自体が間違っていることが原因です。
財産の評価額が間違っているからとかいう複雑な部分の話ではありません。
財産の評価額については専門家に相談した方が良いでしょう。
しかし、大まかな相続税の計算は税務のことが全くわからない初心者の方でも可能だとのことでした。
そこで今回は相続税がかかるのか、かからないのかの基準、いわゆる基礎控除について簡単におさらいします。
それから、初心者に向けて相続税の計算をするための3ステップについて解説していきます。
この記事は将来的に相続税がかかりそうな方、相続税がかかりそうで不安だから今から節税対策を取っておきたい方に有益な情報が記載されています。
相続税の節税対策は、相続税がどのくらいかかるのかざっくりと分かっていなければ適切な行動は取れません。
ですから自分の家には相続税がかかるのか、ざっくりとどのくらいの金額の相続税を支払うことになるのか、知っていただきたいです。
相続税の計算方法を3ステップに分けて分かりやすく記載していますので、ぜひ最後までご覧ください。
そもそも相続税がかかる判断基準は何?
そもそも相続税がかかる判断基準は何なのでしょうか。
相続税がかかる判断基準は亡くなった方が持っていた財産が基礎控除額を超えるかどうかで決まります。
相続税の基礎控除についてはこちらの記事をご確認ください。
相続税の計算方法3ステップについて解説
次に相続税の計算方法3ステップについて解説していきます。
STEP1 財産と債務、お葬式費用を把握する
STEP2 正味の財産額から基礎控除を引く
STEP3 税額を計算する
というように進んでいきます。
一見難しく見えるかもしれませんが、実際やってみるとシンプルなので1つずつ進めていきましょう。
STEP1 財産と債務、お葬式費用を把握する
財産と債務、それと葬式費用を把握して、正味の財産額を計算する必要があります。
財産というのは、身近な財産、なじみのない財産、3年以内に受けた贈与に分けられます。
身近な財産
まず身近な財産とは、不動産、現金・預貯金、有価証券、事業用資産、家庭用財産、絵画、骨董品、みなし相続財産、電話加入権、建物更生共済といったもののことを言います。
なじみのない財産
次になじみのない財産とは、借地権、生命保険に関する権利、建物更生共済の返戻金、漁業権、著作権、営業権といったもののことを言います。
3年以内に受けた贈与
もしも、相続人の方が故人が亡くなる3年前に贈与を受けていた場合、贈与を受けた財産も相続財産に含めることになりますのでご注意ください。
債務
債務とは、以下の3つを指します。
借金・借入金、未納の税金、故人が確実に返済・支払い・納税をすべきだったものです。
お葬式費用
お葬式費用とは、お通夜の費用、葬式当日の費用、戒名代をひっくるめたものを言います。
意外に思われるかもしれませんが、葬式費用には含まれないものとして、初七日や四十九日などの法要の費用、香典返しの費用が挙げられます。
香典返しの費用を葬式費用に含めない理由は、故人の相続財産に含める必要性がない点と、香典返しの費用もお葬式費用に含めないといった点が挙げられます。
余談ですが、相続が発生してから相続人が買った仏壇やお墓も債務にはならない点に注意しましょう。
どうせ買うのであれば、相続が発生する前に被相続人になる人が購入しておけば預金が減りますので、相続税の節税が可能です。
財産、債務、葬式費用のそれぞれを把握することによって、正味の財産額を計算することができます。
ここからはとてもシンプルです。
把握した財産額から債務と葬式費用を引くこと。
これでSTEP1は完了です。
STEP2 正味の財産額から基礎控除を引く
相続税の基礎控除の説明についてはこちらの記事からどうぞ。
妻と長男、長女が相続人になり夫が死亡した場合の基礎控除を簡単にシミュレーションしてみます。
3,000万円+600万円×3=4,800万円
といったところになります。
ですから、正味の財産額が8,000万円ぐらいあった場合は、8,000万円ー4,800万円=3,200万円となります。
課税対象額は3,200万円と出ました。
これでSTEP2は終了です。
STEP3 税額を計算する
まず家族全員の相続税額の合計を計算する必要性があります。
法定相続人が1人ではなく複数人いた場合、まずは法定相続分の数字を使って家族全員で支払う相続税の計算をします。
法定相続分とはざっくりと説明しますと、民法で規定している財産の分け方です。
相続人が配偶者と子供1人だった場合は、配偶者は財産の2分の1。
子供も財産の2分の1を相続することが規定されています。
相続人が配偶者と子供2人だった場合は、配偶者は財産の2分の1。
子供も財産の4分の1ずつを相続することが規定されています。
法定相続人が誰かによって規定されている財産の取り分が違ってくるといったところです。
民法で規定されている割合というだけなので、実際に相続財産を分ける時は割合が異なっても大丈夫です。
しかし、相続税の税額を計算する際に法定相続分ででた数字にそれぞれの税率を掛け合わせます。
それから控除額を引くことで、家族全員が支払う相続税がいくらになるのか計算する必要が出てきます。
まずは先ほどSTEP2で求めた課税対象額(例:3,200万円)に各自の法定相続分をかけます。
夫が亡くなり、妻と子供2人が相続人になった場合の例を示します。
妻:3,200万円×1/2=1,600万円
子供:3,200万円×1/4=800万円
それから相続税の速算表の通りに控除額を引いていきます。
相続税の速算表とは、超過累進課税である相続税を簡単に計算するための税率表のことを言います。
超過累進課税とは簡単に表現すると、課税の対象額が一定額を超えた場合に適用する制度のことです。
超えた金額に対してのみ高い税率を適用されるので、そもそも法定相続分に応ずる所得金額が少ない人には適用されませんのでご安心ください。
計算すべき最低税率は10%、最大税率は55%と定められており8段階に区分されます。
また、法定相続分に応ずる取得金額が1,000万円以下ならば、控除額は0円です。
法定相続分に応じて取得金額が増えるに従い、控除額も増額されます。
こちらの表を見ていただければ、ご自身の家庭の、法定相続分に応ずる取得金額と税率、控除額の割合を瞬時に計算することができるでしょう。
こちらは国税庁HPから引用した相続税の速算表です。
<相続税の速算表>
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
前述した例で相続税の速算表を利用しながら相続税の計算例をご紹介します。
妻は法定相続分に応ずる取得金額が1,600万円なので、税率が15%で控除額が50万円。
子供は法定相続分に応ずる取得金額が800万円なので、同じく税率が15%で控除額が50万円。
これを計算すると、1,600万×0.15-50万+(800万円×0.15-50万)×2=190万+140万=330万となります。
妻が配偶者の税額軽減の特例を使えば、妻は相続税の金額をゼロにすることや、相続税を大幅に減らすことができます。
利用する際の注意点もありますので、配偶者の税額軽減の特例の利用を検討する方はこちらの記事をご覧ください。
これにてSTEP3の相続税の税額の計算は完了です。
特にSTEP3は難しそうに見えるかもしれませんが、よくわからない方式を使うこともありません。
速算表の一覧表を見てゆっくりと落ち着いて計算すれば、初心者の皆さんでも相続税の計算をすることができますのでご安心ください。
相続税の計算をするにあたっての注意点
相続税の計算をするに当たって専門家でなければ対処できない分野があります。
専門家でなければ対処できない分野として、財産の正確な評価や一次相続、二次相続の効果的な遺産分割の方法についてが挙げられます。
相続税の計算方法3ステップを使えば初心者でも相続税計算が可能!
相続税の計算は一見初心者の方にとってはとても難しく感じる方が多いと思います。
相続税で難しいのは、
・財産の正確な評価
・1次相続、2次相続を通しての効果的な遺産分割の方法
についてです。
これらは専門家でなければ対処できない可能性も高いです。
しかし、亡くなった方のざっくりとした財産額や債務額が分かれば、相続税の計算自体は誰でも簡単にできます。
ぜひ大きくざっくりとでも良いので、
・そもそも相続税が掛かりそうか
・残された相続人は、相続税を負担しなければならないのか
を計算しましょう。
もしどうしてもわからない場合は相続税の計算シミュレーションアプリを使ってみるのも良いですね。
相続税の計算シミュレーションアプリの記事はこちらからご覧ください。
この記事を読んで、将来の家族の負担を少しでも減らせるように、元気なうちからあなたの財産を次の世代に渡して行く準備をしていただければとても嬉しいです。