「相続税の基礎控除って何?」
「相続税の基礎控除はどうやって増やすの?」
「相続税の基礎控除の他に利用できる控除はないの?」
上記の疑問を持った人も多いのではないでしょうか。
その疑問を全て解消するべく「相続税の基礎控除とは?相続税の計算方法や申告不要の場合まで徹底解説!」と題して上記悩みに徹底フォーカスしていきます。
はじめに、相続税の求める方法・計算式についてはこちらの記事で取り上げているのでぜひ確認してみてください。
相続税とは?
はじめに、相続税の決まり方をおさらいしておきましょう。
相続税とは亡くなられた人が所有する財産を受け継ぐときにかかる税金です。
亡くなられた人の純財産を大きな箱ととらえてみるといいでしょう。
この箱に亡くなられた人の所有していた資産・財産が入っています。
この大きな箱から基礎控除という箱を引いた残りの金額から求めます。
確定申告でいうと、基礎控除を引いた残りの箱が課税所得と言われています。
少しわかりやすくなったでしょうか。
純財産とは亡くなられた人が所有していた次のような財産・資産を指します。
- 株式・投資信託等の有価証券
- 現金預金
- 換金可能な資産
- 生命保険
- 不動産
不動産は固定資産税評価額×1.14で計算できます。
ですが、専門家に頼んだ方が無難ですので専門の税理士に相談しましょう。
税理士に依頼する基準についてはこちらの記事をご覧ください。
言い換えれば、この基礎控除の枠を越えなければ、申告する必要はありません。
相続税の基礎控除枠のもとめ方
では、相続税の基礎控除はどのようにもとめるのでしょうか?
相続税の基礎控除枠の計算方法を説明しましょう。
基礎控除は法定相続人をもつ人の人数で変動します。
基礎控除=3,000万円+600万×法定相続人の人数
上記の通り、ベースの金額3,000万円に法定相続人の人数にあわせて基礎控除の金額が増えることがわかりますよね?
法定相続人とは?財産を相続できる権利がある人のこと
基礎控除枠の求め方で記載した通り、相続税は相続する人の人数で決まります。
法定相続人とは、配偶者・子供・孫等亡くなられた人の財産を相続できる権利がある人のことです。
相続できる権利は遺言書があるケースと遺言書がないケースでわかれます。
【遺産分配時の割合の決め方】
- 遺言書があるケースでは、子供・配偶者等親族に限らず相続できる
- 遺言書がないケースでは、親族で話し合い割合を決定
遺言書があるケースでは遺言書にある通りに遺産を振り分けることになります。
遺産相続時に相続の分割について全員の合意が取れれば、法定相続の割合に従う必要はありません。
ですから、相続のことについて親・子供等親族みんなで事前に考えておくと得します。
法定相続人の優先順位
残念ながら、遺言書がないケースの方が多いでしょう。
遺言書がないケースの時に参考にするといいのが法定相続人の優先順位です。
相続人の優先順位でおさえておきたいポイントは2つです。
- 配偶者は必ず法定相続人になる
- 配偶者以外の親族は相続する優先順位が決まっている
それぞれ順をおってみていきましょう。
配偶者は必ず法定相続人になる
亡くなられた人の配偶者は当然法定相続人になります。
仮に、配偶者しか法的に財産を相続する人がいなければ、当然、配偶者に相続の資産の全額受け継がれます。
ただし、基礎控除枠は少なくなります。
もし、配偶者以外に法定相続人がいる場合、配偶者の法定相続分は以下のように振り分けられます。
相続人の内訳 | 配偶者の相続できる資産の内訳 |
配偶者のみ | 相続する資産の全て |
配偶者+亡くなられた人の子供・孫等 | 資産×2分の1 |
配偶者+亡くなられた人の親・祖父母 | 資産×3分の2 |
配偶者+亡くなられた人の兄弟姉妹 | 資産×4分の3 |
親族は相続する優先順位が決まっている
配偶者を除いた相続の優先順位は以下の通りです。
【相続順位】
1:亡くなられた人の子供、代襲相続人(子供が亡くなっていた場合の孫)
2:亡くなられた人の親、亡くなられた人の祖父母
3:兄弟姉妹、代襲相続人
第1順位:亡くなられた人の子供、代襲相続人
配偶者 | 子供 | |
事例1 | あり | あり |
事例2 | なし | あり |
亡くなられた人の子供は相続順位で配偶者の次に優先されます。
もし、子供が亡くなっていた場合、亡くなられた人の孫が繰り上がる形で第1位になります。
第2順位:亡くなられた人の親、亡くなられた人の祖父母
配偶者 | 子供・孫等の後の親族 | 親 | |
事例1 | あり | なし | あり |
事例2 | なし | なし | あり |
亡くなられた人の第2位は亡くなられた人の親又は祖父母です。
上記の表にある通り、亡くなられた人に子供・孫など後の親族がいない場合、亡くなられた人の親又は祖父母が優先順位第2位になります。
第3順位:兄弟姉妹、代襲相続人
配偶者 | 子供・孫等の後の親族 | 親・祖父母 | 兄弟姉妹 | |
事例1 | あり | なし | なし | あり |
事例2 | なし | なし | なし | あり |
優先順位の第3位は亡くなられた人の兄弟・姉妹です。
上記の表の通り、直系の後継の親族又は亡くなられた人の親・祖父母がいない場合、
兄弟姉妹が優先順位の第3位になります。
相続の順位に関する詳しい記事はこちらに掲載してありますので、こちらの記事もご覧ください。
法定相続人の取り扱いの注意点
法定相続人の取り扱いの注意点を説明します。
法定相続人は次の4つのケースに当てはまると、優先順位が入れ替わることがあります。
- 法定相続人が相続の権利を放棄したケース
- 亡くなられた人の子供・親等親族が死んでいるケース(代襲相続)
- 亡くなられた人に養子がいるケース
- 相続人の中で相続欠落・廃除された人がいるケース
それぞれ詳しく説明していきます。
注意点1:法定相続人が相続の権利を放棄したケース
亡くなられた人が借金を多く抱えているなど、法定相続人が遺産を受け取ることを放棄することもできます。
この場合、放棄した当事者は相続する権利を失います。
ですが、基礎控除の計算上は相続の権利を放棄した人も人数にカウントすることができるんです。
注意点2:亡くなられた人の子供が亡くなっているケース(代襲相続)
亡くなられた人よりも先に子供が死んでいたケースもありますよね。
優先順位の高い人が亡くなっている場合、相続の権利が次の親族に移ることになります。
わかりやすい例が優先順位の一番高い子供が亡くなられた人より先に死んでしまった事例です。
上記のような事例を代襲相続と呼びます。
注意点3:亡くなられた人に養子がいるケース
亡くなられた人に養子がいると、養子の人数も法定相続人としてカウントされます。
ただし、基礎控除の人数に含める際、養子の人数には上限があります。
養子の人数(法定相続人として計算することができる人数) | |
亡くなられた人が実の子供がいる | 1人 |
亡くなられた人が実の子供がいない | 2人 |
注意点4 :相続人の中で相続欠落・廃除されている人がいるケース
相続放棄以外に以下のケースでは相続欠落・相続廃除されることになります。
ざっくりまとめると、犯罪・暴力がらみで家族間でトラブルが起きてしまうケースです。
相続欠落するケース(相続人が相続について犯罪等に該当する場合)
具体的には以下のようなケースが該当します。
- 亡くなられた人・相続人を殺した
- 亡くなられた人が殺害されたことを知っているのに告発しなかった
- 亡くなられた人を騙すなど遺言書の内容を意図的に改ざんさせた
- 遺言書の書き換え・隠ぺいなどに関わった
相続廃除されるケース(亡くなられた人が家庭裁判所に相続人から外すよう依頼し受理されていた場合)
- 相続人が亡くなられた人に激しい暴力などを犯していたケース
- 相続人が家族に借金を肩代わりさせたケース
- 相続人が犯罪を犯して家族に迷惑をかけたケース
上記のように家族間での問題が発生し、亡くなられた人が裁判所に申し立てて、その申し立てが通った場合に相続人から廃除することができます。
相続税で基礎控除以外に利用できる控除
相続税で基礎控除枠以外に利用可能な節税対策ご存じですか?
この内容を知っているか知らないかで大きく影響するので、下記の控除をそれぞれみていきましょう。
配偶者の税額控除
亡くなられた人に配偶者がいる場合、相続税の申告期限内に申告書を提出することで以下の条件を適用することができます。
- 配偶者の法定相続分が2分の1に減額される
- 1億6,000万以下又は法定相続分の金額以下であれば、相続税は減免される
未成年者の控除
法定相続人が未成年の場合、未成年者が18歳になるまで1年につき10万円が控除されます。
1歳未満の年齢は切り捨てますが、適用条件を充分理解したうえで利用しましょう。
- 法定相続人である
- 財産の相続時、日本国籍をもっていること
- 財産の相続時に18歳未満であること
障害者控除
法定相続人をもつ人の中に障害者がいる場合、85歳になるまで1年につき10万円又は20万円ずつ控除を受けることができます。
控除される金額(85歳まで1年ごとに控除) | |
一般障害者の場合 | 10万円 |
特別障害者の場合 | 20万円 |
<h3>小規模宅地による特例控除</h3>
最後に、相続する資産の中に土地・家などが含まれる場合、土地の評価額に基づいて相続税をもとめます。
貸し出す・事業用として・プライベートの自宅等用途に応じて減額できる金額が変わってきます。
特例をしっかり適用するために条件が複数あるので事前に調べておくといいでしょう。
相続税の基礎控除のQ&A
最後に、相続税の基礎控除についての疑問点をまとめておきますので、参考にしてください。
Q1:債務・葬式の費用は相続税の課税分で計算するときどうやって計算すればいいの?
債務・葬式の費用は相続の課税所得金額からマイナスされます。
確定申告における経費と同じ扱いと考えるとわかりやすいでしょう。
ただし、葬式の費用は実質支出になります。
無理な節税をしてもメリットは少ないことを覚えておくといいでしょう。
Q2:基礎控除以外の控除を適用する場合の注意点はないの?
基礎控除以外の控除を利用する際の注意点もあります。
相続の課税所得金額が上記控除により差し引かれたことにより基礎控除枠の範囲内の金額になったとしましょう。
それでも相続税の申告は必要になります。
なぜなら、基礎控除枠はその他の控除適用前の金額から算出しているからです。
例えば、相続する資産が合計6000万円(うち土地4,000万円)あったと仮定しましょう。
小規模宅地の特例により80%減額になり、1,200万円+2,000万円=3,200万円になります。
3,200万円を基礎控除と比較すると考えがちですが、適用前の6,000万円で算定するので相続税の申告は必要になります。
Q3:法定相続分の分け方は相続人全員の合意が取れれば、上記の法定相続分の分け方以外でも問題ないか?
問題ありません。
法定相続分を振り分ける場合、遺産分割協議をおこないます。
遺産分割協議により全員の合意が取れれば、上記で紹介した通りの分割方法以外でもOKです。
上記で説明している分割方法は政府が定めている目安になります。
Q4:法定相続人にカウントしてはいけないケースはありますか?
法定相続人にカウントできないケースは以下のケースです。
- 内縁の妻や夫
- 養子に出した子供
- 再婚相手の子供で養子縁組をしていない子供
婚姻届けを提出していない事実婚の場合、相続の権利はありませんので注意しましょう。
相続税の決まり方を正しく理解して節税しよう
相続税の基礎控除の算出方法について以下の点を解説しました。
- 相続税の基礎控除は法定相続人の人数により控除枠が増えていく。
- 遺産を相続する場合、遺言書がない場合は法定相続人同士で話し合いが必要である。
- 法定相続人を決める場合、配偶者は必ず相続の遺産を受け取ることができる。
- 基礎控除以外に配偶者控除等個人の生活的事情を考慮して控除も複数適用できる。
ここまでの内容を充分理解したうえで相続税の基礎控除・控除の方法を理解しましょう。