「相続時精算課税制度のメリットって何ですか?」
「相続時精算課税制度はどんな時に課税される使われる制度ですか?」
「相続時精算課税制度は、デメリットだらけって本当ですか?」
このような疑問を持つ人が非常に多いです。
今回は、相続時精算課税制度を使うメリット、デメリット、使った方がいい人について詳しく解説していきます。
この記事は現役の税理士にインタビューして書いたものですので、情報はとても真新しいものとなっています。
サクッと、5分で読めますので是非最後までご覧ください。
相続時精算課税制度とは?メリットも解説!
相続時精算課税制度とはいったい何なのでしょうか。
また、この制度のメリットも一緒に解説していきます。
相続時精算課税制度とは
この制度は、60歳以上の父母や祖父母が20歳以上のお子さまや孫に資産をあげる時に関係する制度です。
通常資産をもらうとき、1年間にあなたが他人からもらった財産から110万円をマイナスした額に税金がかかります。
これに対し、親や祖父母などの血縁関係がある方からの資産をもらうときについて使われる制度のことを言います。
この制度を使ってお子さまや孫にあげることができる財産は、現預金だけではなく、有価証券や不動産などさまざまな財産です。
また、現預金で贈与を受けた場合にはお子さまや孫が何に使っても良いということになっています。
贈与税の申告書と、相続時精算課税選択届出書を税務署に提出しなければなりませんが、贈与者1人につき最大2,500万円までの贈与を税金を払わずに行える制度でもあります。
その代わり資産をくれた身内が亡くなった時、相続の時にそれまでにいただいた資産を精算して相続税をかけるといった制度になります。
相続時精算課税制度を使った場合のメリット
この制度を使った場合のメリットは、資産を受け取るとき全部で2,500万円まで贈与に対して税金がかからないことです。
通常、資産をもらうときは年間110万円までは税金がかかりません。
しかし、この制度では2,500万円までに対しては税金がかからないで財産を受け取ることができます。
累計で2,500万円なので、1年目に400万円、2年目に400万円、3年目に1,700万と分けても構いません。
早いうちにお子様に財産を渡すことが出来ます。
また、将来相続税がかかる財産の額は資産をもらった時の評価額となります。
このことから、時間の経過と共に財産の価値が上がった場合、価値が上がる前の安い評価額で相続税を計算することが出来ます。
例えばもらった1,500万円の土地が、10年後相続の時になって4,000万円に上がっていても、相続税は1,500万円で計算されます。
それから賃貸アパートなどの定期的に収益が入る物件を持っている方は、この制度が相続税対策になることも多いでしょう。
収益が入る物件を持っている人は、物件から入る家賃によって収益がどんどん増えている状態です。
この場合、この制度を使って収益が入る物件をお子さまなどに資産としてあげると、その後の家賃はお子さまに入りますので、相続税を減らすことが可能です。
この制度は、相続の時に相続税をかける制度なので、相続税の大幅な節税にはなりませんが、このような使い方もあります。
相続時精算課税制度のデメリット
ここまで相続時精算課税制度のメリットについて解説してきました。
では、この制度のデメリットは何なのか、気になりますよね。
ここからは、この制度の複雑さと多くのデメリットについて解説していきます。
生前の贈与財産を遺産総額に足し戻して計算する制度
この制度を適用する最大のデメリットは、相続税の計算時に生前の贈与財産を亡くなった人の遺産総額に足し戻して計算するといったところです。
全くもって相続税の節税にはなりません。
例えば6,000万円の財産がある父親が、自分の財産を基礎控除額以下とするため、2,400万お子さまに贈与したとします。
父親の財産は3600万円となり、課税対象は0となり、節税できたと考える方も多いでしょう。
この場合、相続税の計算式は(6,000万円ー3,600万円)×15%-50万円=310万円
これを110万円ずつ22年間贈与していたとしたらどうでしょうか?
合計で3,580万円あげることになり、6,000万円ー3,580万円=2,420万円になりますので、相続税もかからないということになります。
土地の贈与に相続時精算課税制度は要注意
また、父親に1,500万円の土地をもらったとします。
もらった1,500万円の土地が、10年後相続の時になって500万円にさがっていても、相続税は1,500万円で計算されます。
そうなると、今の時価の500万円+1,500万円=2,000万円で計算されることになり、大きく損を被ることにもなります。
このように建物や土地、有価証券などの価値の変動の見込めないものは、この制度を利用すべきではないでしょう。
相続時精算課税制度は撤回をすることができない
この制度は1度選択するとやり直しや撤回をすることは出来ません。
例えば父親から、この制度を使い、2,500万円もらうとします。
それから父親がものすごく長生きをしたらどうでしょうか。
長生きすること自体は喜ばしいことではありますが、相続税だけで考えるのなら、年間110万ずつもらった方がお得かもしれません。
年間110万まで受け取る分に対しては、税金はかからないと決まっていますので、贈与税も相続税もかかりません。
現金の贈与で単純に考えると、父親が23年以上生きることができて毎年110万ずつもらった方がお得です。
今回父親からの贈与に相続時精算課税制度を選択してしまったので、父親からの贈与には2度と110万円の税金がかからない枠は使うことはできません。
お得な特例が使えない
それから土地をお子様にあげると、小規模宅地等の特例が使えなくなるということにも注意が必要です。
小規模宅地等の特例とは、一定の土地についてその評価額を8割から5割程度減らして相続することができるといった制度です。
この制度が使えないのは、土地を持つ方にとってはとても大きな損害だと考えます。
さらに、不動産を贈与する場合も、登録免許税の負担も大きくなります。
メリットも多いのですが、デメリットも多い制度となります。
相続時精算課税制度を使った方が得をする人
ここまで相続時精算課税制度のメリット・デメリットについて解説してきました。
うかつに使ってはいけないことはわかりましたが、相続時精算課税制度を使った方が得をする人もいます。
ではどのような人は相続時精算課税制度を使った方が得をするのか見ていきましょう。
将来相続が発生しても基礎控除を超えない人で大きな財産の贈与を行いたい人
例えばコロナのせいで営む飲食店が大打撃を受けてしまったという長男がいたとします。
長男は何とか事業を続けていきたいので、1,500万円ほど貸して欲しいということで父親の元にやってきました。
父親としては長男の事業を応援したいので、お金の貸し借りを行う契約書を結ぶことに反対はないのですが、相続時精算課税制度を使った財産の受け渡しを行うというプランを思いつきました。
ちなみに父親の財産は3,500万円としましょう。
相続時精算課税制度を使った財産の受け渡しを行うことで、長男には1,500万円非課税で財産を渡すことができます。
父親の財産はもとより3,500万円で、基礎控除3,600万円を超えていないため、相続税もかからないということになります。
財産が不動産メインで特定の人物に土地や建物を渡したい場合
財産が不動産メインの際に起こる悲劇はこちらの記事をご覧ください。
相続時精算課税制度は、相続の節税対策にはなりませんが、相続のトラブルを防ぐことになります。
通常共同名義で相続した後に不動産を売りたい場合、権利関係が複雑になりますし、名義人全員の承諾も必要となってきます。
そこで活用できるのが相続時精算課税制度ということです。
生前に土地・建物を贈与しておくと、評価額が2,000万円だった場合、1円も払わずに相続することができますね。
共同名義で相続することもないので、トラブルにはなりませんね。
収益性のある賃貸物件を所有している場合
賃貸物件を所有している場合、毎月の家賃が入ってきます。
経費を差し引くと残額が現金や預金として残りますね。
それが早く子供より亡くなるであろう父親が所有していると、相続税が増えるばかりです。
生前に贈与することで、収益が子供のものとなりますので、父親は自分の財産が増加するのを防ぐことができます。
贈与を行うことなく、収益物件を所有していた場合、毎月の家賃収益によりもっと膨らむので、相続税は高くなってしまいます。
こう考えると、相続時精算課税制度も検討してみる価値があるのではないでしょうか。
しかし、相続時精算課税制度では贈与時の評価額が足し戻されるので、現在の収益物件の価値が将来どれぐらい落ちているかなども専門家の意見も交えながら考える必要があるところですね。
相続時精算課税制度を上手に活用しよう
相続時精算課税制度のメリット・デメリット、そして相続時精算課税制度を使った方がお得な人の例を見てきました。
一見非常に便利かと思われる制度でしたが、この制度はとても複雑でデメリットも多かったかと感じます。
素人には判断の難しいところもありますし、ご自身やご家族の曖昧な判断で相続時精算課税制度を使うことはやめましょう。
相続専門の税理士などに相談の上、相続時精算課税制度は利用することをおすすめします。
お医者さんに専門があるように、税理士にも専門がありますので、必ず相続専門チームか、相続専門の税理士に依頼することが大事です。
相続の相談は相続専門家チームへということの理由が書いてある、サクッと5分で読める記事はこちらにありますので、あわせて読んでいただけるとより理解が深まるでしょう。