2024年から相続登記義務化が始まろうとしていて、相続登記をしないとさまざまなデメリットを被ることが知られています。
・不動産の売却や不動産を担保にすることができない
・不動産の権利関係が複雑になる
・他の相続人が勝手に法定相続分で自分の持分を売りはなつ可能性がある
・借金がある相続人の不動産持分を差し押さえられ売却される可能性が出てくる
ざっと例をあげるだけでもこれだけのデメリットがあります。
相続登記義務化で罰則規定も適用されるので、相続登記はする必要が出てくるのです。
相続登記義務化についての記事はこちらにありますので、良ければご覧ください。
とはいえ、お客様から買い手も見つからないような不要な土地のために面倒な相続登記申請をすることや、固定資産税の支払いには納得がいかないという声が多く寄せられました。
そこで今回は、親から相続した不要な土地だけを放棄することは可能かといった話をします。
結論としては、親から相続した不要な土地だけを放棄することはできません。
今の法律上では土地や山林を放棄したいのなら、預金や有価証券などの全ての財産を放棄しなければならないということになります。
だからといって相続放棄さえすれば全ての問題が解決するというわけでもありません。
相続放棄にはメリット・デメリット両方の側面がありますので、最後までご覧いただき意向を決定されてはいかがでしょうか。
相続放棄とは
預金や有価証券といったプラスの財産よりも、借金の方が多い場合や、相続人にとって不要な財産しかない場合において、相続開始から3ヶ月以内に相続放棄を行います。
このことによりプラスの財産もマイナスの財産も引き継がなくていいようになります。
相続放棄の場合、限定承認と違って家庭裁判所に相続人全員で行う必要がないので相続放棄を行いやすいのですが、相続開始から3ヶ月以内に相続放棄を行わない場合には強制的に単純承認となります。
限定承認については、サクッと5分で読めるこちらの記事をご覧ください。
相続放棄するにあたってしていいこととしてはいけないこと
相続放棄をするにあたってしていいこととしてはいけないことについて具体例をあげて解説します。
相続放棄を検討しているのならば、してはいけないことには特に注意してくださいね。
相続放棄をするにあたってしてはいけないこと
相続放棄の前後に亡くなった方の財産をうかつに処分したり形見分けしたりしてしまうと、強制的に単純承認になってしまうということにもなりかねません。
具体的にどのような行為をしてはならないか説明していきます。
相続放棄の前後においてこちらにまとめた4つの事項には特にお気をつけください。
・建物を勝手に壊して更地にする
・経済的価値のある財産の売却
・経済的価値のある衣類や美術品などの形見分け
・相続財産を使い、非常に高い墓石を購入
このようなことをすると、相続放棄はできなくなってしまい、逆に単純承認が適用されてしまいます。
1度単純承認となると、もう2度と相続放棄をすることはできませんのでご注意ください。
相続放棄をするにあたってしていいこと
また、しても良い行為としては次のような4つの事項が挙げられます。
・近隣に迷惑をかけないための家屋の修繕
・経済的価値のない財産の廃棄処分
・経済的価値のないものの形見分け
・墓石の購入や、葬式費用の支払い
などが挙げられます。
遺産の処分とはならないため、問題はありません。
しかし、今の法改正ではいつどうなるかわからないのが現状だと考えます。
ですから、ご自身やご家族で勝手に判断せず、一度弁護士や司法書士に相談した上で処分なり形見分けなりをしてください。
ここまでが相続放棄の基本的なところとなります。
相続放棄のデメリット
ではここからは、親の財産は少額の預貯金と不要な土地や畑や山しかないから、全ての財産を相続放棄したいという方に対して相続放棄をしてもデメリットがあることをお話ししていきます。
何かというと、相続した不動産(山林や不要な土地)の管理義務が残るということになります。
相続放棄のデメリット!不動産の管理義務は残る?
相続というのは亡くなった人を中心として誰が相続するかの順位付けが民法で決まっています。
相続の順位についてはこちらの記事をご覧ください。
この順位付けによって相続権が移動していきます。
相続権がうつったことにより相続権が移った人が土地や山林の管理を始めるまでは、元の相続権の順位が高い人が自分のお金を使って自分で管理をする必要があります。
とはいえ、山林や古くなった建物は誰も欲しがりませんよね。
ですから次の順位の方も山林や古くなった建物も管理する気はないでしょう。
結局のところ山林や古くなった建物や土地の管理義務は元の相続順位が高い人に残ることになります。
相続放棄のデメリット!予納金が高額
そうなると、ずっと元の相続順位が高い人が山林や古くなった建物を管理しないといけないのかというと、そうではありません。
亡くなった方の相続人全員が相続放棄をすれば良いのです。
家庭裁判所に対して亡くなった方の代わりに財産を処分してくれる弁護士や司法書士などに申し立てることができます。
相続財産管理人が認められた場合には、全ての手続きを行ってくれるので、ここまでしてはじめて必要ない土地や建物の管理から逃れられることができます。
しかし、相続財産管理人の選定にもデメリットがあります。
それは、予納金が高額であるといったことです。
相続財産管理人の経費や報酬として裁判所が決定するものが予納金なのですが、大体50万円から100万円になることがほとんどとなります。
相続放棄をしているということは1円もプラスの財産は入りません。
それにも関わらず、50万円から100万円の予納金を支払う必要があるというのは、相続人にとってはかなりのデメリットではないでしょうか。
また、本当に不要な土地や建物を受け取ると、相続放棄を全員でする必要もあるので、そこも注意ですね。
相続放棄せずに土地だけを放棄することが可能になる法案?
ここで朗報と言えるかは微妙ではありますが、国が不要な土地を引き取ってくれるという法律が2023年度4月までに導入されることが決まりました。
この制度はどういった制度なのか順を追って見ていきましょう。
STEP1 相続登記を済ませて土地の所有者が誰かを明確にする。
STEP2 国が定める厳しい条件をクリアする
STEP3 管理費用10年分を納付すること
STEP4 国が不要な土地を引き取ってくれる
という制度です。
この法案は2021年4月21日に成立して、2年以内に施行されることが決まっています。
この制度を使えば親から不要な土地だけを相続放棄することが可能です。
ですが、この制度に関してもそんな簡単に話は進みません。
というのも、国が制限なく不要な土地を受け取ると、その土地にかかる管理や処分に必要なコストがとても莫大になってきますよね。
ですから、国が不要な土地を引き取ってくれる条件はとても厳しい条件になっています。
・建物を取り壊し更地であること
・土地に対して第三者の担保権や使用収益権が設定されていないこと
・通路その他、他人による使用予定が政令により定められていないこと
・放射線などの特定有害物質により土地が汚染されていないこと
・土地の境界が明らかであること
・がけちなどの管理困難な土地でないこと
・土地の上に車両や樹木がないこと
・地下に除去しなければならない有体物がないこと
・隣接する土地の所有者などとトラブルを抱えていない土地であること
・上記9個の全ての条件に当てはまる土地で管理や処分をするにあたり、高額な費用な労力を使わない土地であること
見るだけでも手に汗が出てくるような条件ですね。
これらの条件を満たした上で10年分の管理費を納める必要があります。
原野の管理費用に関してはある程度大雑把な管理で足りるので約20万円。
市街地にある宅地では、200㎡においては約80万円。
この制度を受けるには、高額な取り壊し費用をお支払いして土地を更地にする必要はある上に条件もなかなか厳しいと言えるでしょう。
ですから、この制度を使える人自体がかなり限定されるのではないかと考えます。
ですが、この厳しい条件さえクリアしてしまえば、
・今まで不要な土地の固定資産税を支払ってきた人
・相続財産管理人に依頼をするしかないと諦めている人
などは不要な土地を手放すために相続放棄をする必要性がなくなります。
つまり、親のプラスの財産を受けた上でも恩恵を受けるのではないでしょうか。
ですから、もしこの制度を利用検討したいという方がいた場合は速やかに相続専門家チームに相談してみることをおすすめします。
相続の相談をするなら相続専門家チームへという内容に関しては、こちらの記事をご覧ください。
なぜ相続専門家チームが良いのか、銀行ではダメなのか、役所ではダメなのか、簡潔にわかりやすくサクッと5分以内に読める記事です。
相続放棄のデメリットを徹底解説!不要な土地の処分方法は?
この記事では相続放棄のデメリットを解説してきました。
現状不要な土地は自分だけの相続放棄では処分できないということですね。
結局あなただけの相続放棄はこの不要な土地の処分に関しては何も解決してくれません。
ですから、まずは、国の今回の「国が不要な土地を引き取ってくれるという法律」の検討を行いましょう。
その際は相続専門家チームの専門家に相談してみることをおすすめします。
それから、「国が不要な土地を引き取ってくれるという法律」の条件にどうもクリアできそうになかったら、相続人全員で相続放棄をして、費用と相談しながら、相続財産管理人に依頼をするしかないと考えます。
不要な土地や建物を相続として受け取ると後世に受け継ぐことになっている人が、無事将来的に不要な土地や建物を処分できることを願いながらこの節を締めたいと思います。