限定承認という言葉はあまり聞き慣れない言葉だと感じますが、相続が開始して自分が相続人になった時に選択することができる選択肢の1つです。
「相続放棄をすることで叔父叔母が困るのではないでしょうか?」
「相続するのはいいけれども、借金が後から出てきても困らない方法について教えてください。」
「相続放棄はしたくない!実家と株式だけは相続したいけれど、借金が多いです。なんとかなりませんか?」
相続放棄を考慮に入れるお客様からこういった相談が多いように感じると現役司法書士は言います。
一体どうしたらいいかわからないと大変困惑しているお客様も多いとのことでした。
ですから、今回は自分がいざ相続人になった時どうすればいいか一緒に考えていきましょう。
今回の解説ポイント
・自分が相続人になった時の選択肢は3つ
・限定承認とは
・限定承認のメリットを徹底解説
・限定承認の注意点、及びデメリットを徹底解説
・自分が取るべき方法について誰に相談すべきか
・相続における限定承認の現状
こちらになります。
相続放棄と限定承認と悩んでいる方はとても多いように感じます。
ぜひこの記事を読んで限定承認のメリット・注意点について知ってください。
その上で自分が取るべき方法を決めましょう。
自分が相続人になった時の選択肢
自分が相続人になった時の選択肢は、3つあります。
単純承認
最初に単純承認についてです。
預金も不動産も株も相続ということで、皆さんの相続のイメージ通りのものだと考えて良いでしょう。
プラスの財産もマイナスの財産も全て相続する形になるので、一般的にはプラスの財産が上回るご家庭が取るケースが多いですね。
相続放棄
次に相続放棄についてです。
一切相続しませんといったよく耳にする言葉の相続放棄。
相続放棄を選択される方は、亡くなった方に多額の借金があった場合が多いのが現実です。
しかし、相続放棄をすると、元より相続人とならなかったことになりますから、必然的に相続順位が下である叔父叔母に相続権が移るようになりますよね。
そうなると、叔父叔母に金銭面で迷惑をかけたり、事情を伝えなければならなかったりすることがとても嫌になってしまって相続放棄を躊躇してしまう人もいます。
親戚に金銭面で迷惑をかけるとなると親戚仲は非常に悪くなりますし、絶縁にもなりかねません。
そこで借金が何十万円だったら払ってしまおうという相続人の方も非常に多いです。
限定承認
最後に限定承認についてです。
何も難しく考える必要はありません。
限定承認とは、限度つきで相続できることを言います。
どういうことか簡潔に説明していきますね。
プラスの財産がマイナスの財産より多い場合は、全て相続してプラスの財産でマイナスの財産を返済していくこと。
逆にマイナスの財産の方が多い場合は、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を返済していくといったこと。
とは言ってもパッとしないでしょうから、1つ例をお示しします。
被相続人のAさんの財産が、借金1,000万円、預金は200万円でした。
そうすると、預金200万円の中で返済する義務を負います。
それ以上の800万円の返済義務はありません。
つまりプラスの範囲内で支払いをすればいいのです。
それならばプラスになることはないのだし、もとより相続放棄をした方がいいのではないかという疑問が出てくるでしょう。
ですが、限定承認に関しても相続放棄に勝るメリットというものがあります。
相続の限定承認のメリット
ここでは、相続の限定承認のメリットについて解説していきます。
ご自身の置かれている状況により異なりますが、相続の限定承認を選ぶ方がメリットが大きく感じる場合もありますので、注意深くご覧ください。
プラスの財産を限度に返済すればいい
相続の限定承認の1つめのメリットはプラスの財産を限度に返済すればいいということです。
例えば、預金は200万円ある、でも借金が50万円あるとなった場合です。
正直なところ借金が50万円ある人はカードローンなどで借りているならまだしも、闇金から借りているようなところもあるかもしれません。
つまり、他からも色々借りているかもしれない、把握できていない借金があるかもしれないということですね。
単純承認の場合、後から借金が出てきても払わないといけないことになります。
相続権が次の順位に移らない
相続の限定承認の2つ目のメリットは相続権が次の順位に移らないということです。
借金30万円と、預金20万円。
相続放棄したいけれど、叔父叔母に迷惑をかけることになるし、叔父叔母に借金が亡くなった人にあったことを知られなくて済みます。
相続放棄ならば相続権は次の順位に移るのですが、相続の限定承認なら相続権はあなたで止まり、他の方に移りませんので安心です。
請求が叔父叔母にいくこともありません。
借金が多くとも自宅や株式を相続できる
限定承認の3つめのメリットは、借金が多くとも自宅や株式を相続できるといった点です。
相続が借金2,000万円と自宅、預金がわずかのみ。でも自宅だけは相続したいという方もいます。
会社の経営をされている方が亡くなった場合は株だけ相続したいといった方も多いでしょう。
限定承認という選択をすることで不動産であったり株を相続できるといったところです。
借金のほうが多い場合は、不動産は基本的にお金に変える手続きを法的に取られます。
そこで競売にかけられるのです。
そうなると、誰が所有することになるのかわかりませんよね。
しかし、先買権といった権利を使うことで優先的に適正な価格で、ご自身が買い取ることが出来るというメリットがあります。
適正な価格は、不動産であれば不動産鑑定士、建物内の家財であれば古物商、自社株は税理士が決めていくことになります。
自宅や株式を買い取る手続きの流れとしては
STEP1:鑑定人の選任を家庭裁判所に申し立てます。候補者をある程度家庭裁判所に出していきます。ここで必要な鑑 定費は自費で払う必要があり、相続財産を使うことはできません。
STEP2 :選定された鑑定人が評価を行います。
STEP3: 鑑定評価以上の金額を支払うことで買受けできます。この時の金額の支払いは、自費で払う必要があり、相続財産を使うことはできません。亡くなった人の相続財産は借金の返済に当てられるので、当然のことですよね。
こういった流れとなります。
ここまでが限定承認のメリットです。
相続の限定承認の注意点を徹底解説
限定承認もメリットだけではなく、注意点やデメリットもあります。
そこで限定承認の注意点を徹底解説していきます。
大きく分けて4つありますので、ここから注意深く見ていきますね。
特に最後の手続きがとても面倒なことについては、ここで限定承認へのハードルがグッと上がっているので、注意深く読んでおきましょう。
相続開始を知ってから3ヶ月以内に行うこと
3ヶ月というと相続放棄の手続きと同じ期日でもありますよね。
あっという間に3ヶ月というのは過ぎていきます。
必要書類・戸籍なども取らなければならないので、とてもハードスケジュールとなります。
相続人全員が限定承認を行う必要があるということ
相続放棄した人以外の残りの全員が限定承認を行う必要があります。
全員で協力して限定承認を出していきましょう。
ここでいう相続人には叔父叔母は関係ありませんのでご安心ください。
みなし譲渡所得課税がかかる可能性もある
不動産と株式においてみなし譲渡所得課税がかかる可能性があります。
預金についてはかかる可能性はありませんのでご安心ください。
なぜ、みなし譲渡所得課税がかかる可能性があるかというと、税制上は被相続人から相続人へ時価で財産を売却したとみなされるからです。
詳しくは税理士に相談する必要性がありますね。
株などで得していた場合は、譲渡所得課税がかかる場合があります。
マイナスの財産が多すぎる場合は影響はありません。
手続きがとても面倒
限定承認のハードルを高くしているであろう手続きについて解説していきます。
STEP1:家庭裁判所に相続人全員で限定承認の申し立てをしていきます。
STEP2:もし相続人に対してお金を貸していたら出てきて下さいという、公告をします。官報での掲載の申し込みもする必要もあります。一定期間待ちましょう。
STEP3:相続財産をお金に換える手続きをします。
STEP4:債権者に支払いを終え、残ったお金があった場合はそれを相続するというような手続きを取っていきます。
この手続きを誰が取っていくのかというと、相続人が何人かいた場合、家庭裁判所が「この人が手続きを行ってください」というように相続人の1人が選任してきます。
限定承認の手続きを弁護士に依頼することも可能です。
弁護士を選ぶ基準については詳しく解説してありますので、こちらの記事をご覧ください。
限定承認の手続きに関しては代理としては司法書士はすることは不可能ですが、司法書士からもサポートは可能ということでした。
相続における限定承認の現状
相続における限定承認は、手続きが面倒なことから、少し一般人の方に取ってはハードルが高いように感じますよね。
ですが、借金が多い場合で実家や株式だけを買い取りたい場合はピッタリの方法ではないでしょうか。
また、叔父叔母に迷惑をかけず、また借金の存在を知られずに済むところは非常に良いですね。
自分の身内に借金があったなど知られたくもないのはごもっともです!
ですが、人によって限定承認を取るべきかどうかは変わってきます。
税金面も関わってきますので、専門家に相談した上で限定承認という方法を選択肢の1つにすると良いでしょう。
ここまで限定承認を解説してきましたが、自分には相続放棄の方が合っているなと思われる方も多いかと考えます。
相続放棄の手続きを自分でする方法についてはこちらの記事をご覧ください。
また、相続放棄にはメリットばかりではなくデメリットもありますので、相続放棄のデメリットについてはこちらの記事をご覧ください。
皆さんが最善な方法で限定承認なり単純承認なり相続放棄をできることを祈ってこの節を締めます。
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