「相続財産が不動産が多いのだけど、問題が起こらないかしら?」
「相続財産が不動産が多い予定なので、何か生前対策がないか教えてほしい。」
「金融資産と不動産のバランスがとても悪いんだけど、息子に迷惑をかけないか不安です。」
不動産を多く所有されている方はこのように思われる方も多いでしょう。
そこで相続税がかかる、かからないを問わずどのようなリスクが相続財産に不動産が多い場合にあるか、また相続財産に不動産が多い場合の対策法を一緒に考えていきましょう。
金融資産と不動産のバランス
皆さんや皆さんのご家族が所有する財産は、金融資産と不動産でバランスが取れているでしょうか?
先ほど、「金融資産と不動産のバランスがうちはとても悪いんだけど、息子や娘に迷惑をかけないか不安です。」という不安を寄せる声があったようにとても大切なことになりますので、よく考えていきましょう。
まず、金融資産とは、預金・現金・有価証券のことを指します。
不動産は土地・建物のことを言います。
金融資産と不動産が同じぐらいのバランスという方や、金融資産の方が不動産より多いという方は相続が発生しても何も問題がありません。
逆に、金融資産の方が不動産より少ない場合には注意が必要です。
金融資産より不動産が多い場合にあるリスク
金融資産より不動産が多い場合にあるリスクとはどのようなものなのでしょうか。
一体何が具体的に起こるのでしょうか?
相続の専門家にインタビューしてきましたが、こちらの2つを挙げられました。
相続税支払いのための現預金が相続財産としてもらえないため、相続税の支払いができないといったことです。
相続財産が不動産多めのため、公平な遺産分割が困難であり、遺産分割協議で揉め事になる、最悪な場合亡くなった方と同居をしていた場合は家を失う可能性もあります。
どちらも相続人にとっては困る物ですよね。
相続税額の計算をしてみよう
家庭におけるそれぞれが支払うべき相続税を計算してみましょう。
例えば財産が1億2,000万あったとします。
相続人は子供A、B、Cです。
債務・葬式費用が3,000万であった場合、正味の財産額は9,000万となります。
基礎控除額は3,000万+600万×3=4,800万です。
そうなると、課税対象額は6,400万円になります。
また、それぞれが相続する不動産、預貯金、相続税は次のようになりました。
不動産 | 預貯金 | 相続税 | |
A | 3,000万 | 100万 | 165万 |
B | 3,000万 | 100万 | 165万 |
C | 2,700万 | 100万 | 150万 |
相続税の支払いに当てるための現預金がもらえないため、相続税の支払いができません。
正確には相続税の支払いを自分の資産からだす必要があるということですね。
これだけ高い不動産をもらったなら不動産を売却して相続税を払えばいいのでは?
不動産を売却して相続税を払えばいいのではないかと考える方も多いでしょう。
現在不動産は場所によりますが田舎だとなかなか売れなかったりするので、不動産を相続してもポンと売れてポンと現金化できることはなかなかないです。
公平な遺産分割が困難で相続争いになる
金融資産より不動産の相続が多いと1番起こりやすいトラブルが相続争いだと考えます。
相続税が莫大にかかるような家庭だけではなく、相続税が0円の家庭においても発生する問題ですので注意深く具体的に見ていきましょう。
亡くなった父親の相続財産が、現預金300万、不動産2,700万だとします。
子供がA、B、Cの3人いるとすると、基礎控除額が4,800万で、相続税はかからないことになります。
相続税がかからなくてよかったと思われる方も多いかもしれませんが、兄弟間で父親の財産を均等に分けることは困難だと言えるでしょう。
2,700万の不動産を誰か1人が単独で所有するか、3分の1ずつ共同名義で相続することになります。
しかし、不動産の共有名義にはリスクがあります。
不動産をお金に換えたい、不動産を担保にお金を借りたい、このようなことがあっても1人だけの判断ではできません。
また次の時代に渡す時にはトラブルの元にしかなりません。
亡くなった方と同居していた人は最悪家を失う
亡くなった方の財産に金融資産より不動産が多いだけでも問題なのですが、相続人が複数いるともっと問題は増えます。
何故なら、現物分割を行うのが難しいからです。
金融資産を持っていないので、不動産をもらう代わりにお金を渡すこともできません。
自宅不動産を売却してお金に換金して、お金を用意するしかないのです。
住み慣れた亡くなった方との思い出の家を1番大切にご自身を思ってくれた方が失いかねない事態にもなります。
相続財産が不動産多めの方が生前から取っておくべき対策
トラブルが起きやすいことは説明してきましたが、出来るだけ自分が亡くなった後、相続争いが起きないように、トラブルが起きないようにしたいですよね。
相続財産が不動産多めの方が生前から取っておくべき対策について考えてみましょう。
生前に、所有している不動産を売却して金融資産を確保しておくこと
相続になってから相続人が不動産の売却を行うとなると、絶対に間に合いません。
また、足元をみられ、本来の価格よりも目減りする可能性もあります。
相続人の方が困らないように、生前に所有している不動産を売却しておきましょう。
不動産を預貯金に換金することで、誰も何も困らない事態になります。
やはり土地より物よりお金ですよね。
生命保険を利用して、相続人の納税資金を予め用意しておくこと
現預金や有価証券では受け取りの相手を指定することはできかねますが、生命保険では受け取りの相手を指定することができます。
亡くなった方が兄妹それぞれを受取人とした生命保険の契約をしていれば、それぞれが父親からもらった現預金と生命保険から相続税をこの表の通り支払うことも可能になるでしょう。
不動産 | 預貯金 | 生命保険 | 相続税 | |
A | 3,000万 | 100万 | 100万 | 165万 |
B | 3,000万 | 100万 | 100万 | 165万 |
C | 2,700万 | 100万 | 100万 | 150万 |
事前に生前贈与によって、相続税の納税資金を渡しておくこともできますが、相続人が無駄遣いしていざ相続税を納める時には納税資金がない可能性もありますよね。
あえて死亡保険金という形で遺しておくことも有効です。
遺言書を作成する
兄弟間で完全に平等でなければ納得できないということもあるでしょう。
そこで遺言書を作成することをおすすめします。
基本的に全員の合意がないかぎり遺言の効力が発生します。
しかし、あまりにも分割の内容に偏りがある場合、遺留分を主張することができます。
遺留分とは相続人が最低限主張できる相続財産の権利のことを言います。
遺留分についてはこちらの記事に詳しく記載してありますので、ご覧ください。
遺留分の主張が通らないようにする生前対策を知りたい方は読んでみてくださいね。
大切な方に多くの財産を遺したい、誰もが考えるであろう悩みを解決するためにたったの5分で読める解決法をたくさんお示ししています。
遺留分請求のケース
この表のケースを例に、遺留分を請求されるケースを見てみましょう。
A | 不動産3,700万 | 預貯金300万 | 保険金1,500万 |
B | 遺留分:相続財産4,000万×1/3×1/2=666万円 |
C | 遺留分:相続財産4,000万×1/3×1/2=666万円 |
預貯金・保険金からAはB、Cの遺留分を支払うことができます。
自分の財産は不動産多めで残りの金融資産はわずかしかない場合、自分の家は自分と最後まで一緒に暮らしてくれた人に渡したいというのが人情ですよね。
そういった時に生命保険をかけていれば解決することも多いでしょうし、遺言書を書くことも必要かと考えます。
相続財産が不動産多めの場合のお悩み・対策法
ここまで相続財産が不動産多めの場合のお悩み・対策法について実際の金額を具体例として出しながら解説してきました。
うちも不動産が多く似たようなケースです、という方は今からでも遅くはないです!
まずは売却できる不動産を売却しましょう。
不動産を売却するには時間がかかるものですので、相続が始まってからでは間に合うわけがないといっていいほどのタイムスケジュール感です。
そしてその焦りを逆手に取られてかなりの安値で買い叩かれる可能性もとても高くなります。
ご自身の大切な不動産は出来るだけ高値で取引したいですよね。
また、生命保険をかけておくことで金銭的トラブルやご自身が亡くなってからの不安を防げることも多いです。
ご自身で生前にすることはとても多いように感じるでしょうが、遺された家族のためにひと頑張りしてみませんか?
遺産分割の泥沼は誰もが臨む状態ではありませんよね。
遺産分割協議が泥沼にハマり、ついに相続税申告期限まできてしまったらどうなるかはこちらの記事に書いてありますので、ご覧ください。
大変なことが待っていますので、出来るだけ遺産分割協議はサラッと済ませたいものですね。
弁護士に依頼して遺言書を書くことで相続争いの勃発を防げる可能性もあるでしょう。
弁護士に遺言書を依頼することに関しての記事はこちらですので、遺言書作成を検討される方はぜひ読んでみてくださいね。
弁護士を選ぶポイントを事細かに押さえ、弁護士への依頼費用なども記載していますので、読んで損になる記事では決してありません。
また、相続税の金額においては申告不要・申告必要の場合に限らず、確定申告はした方が良いです。
相続税における確定申告の重要性についてはこちらの記事でご紹介しています。
自分の身を税務調査官から守るために確定申告はした方がいいという内容の記事です。
5分でサラッと読めますので是非ご覧ください。
相続の問題となると、さまざまな問題やトラブルを抱える家庭があります。
そういった家庭に対して少しでもお力になれるよう願いながら、この節を締めたいと思います。