「配偶者控除とはどんな制度ですか?」
「配偶者控除って手続きなしで受けられる制度なのかしら?」
「配偶者控除って限度額ってあるのかな?」
相続の配偶者控除に関する質問は絶えません。
そこで、この記事では配偶者控除について5分でサクッと読めるように解説していきます。
・配偶者控除とは
・配偶者控除を受けるための4つの適用要件
・配偶者控除を安易に使うと大損をする
・配偶者控除をもっとも効率よく活用する方法
この4つの話題に絞ってお話をしますね。
配偶者控除とは
では、まず配偶者控除とはどんな制度なのか見ていきましょう。
配偶者控除とは、配偶者の老後の生活を保証する目的として、相続税の一定額まで配偶者に課税されないという制度です。
配偶者が相続によって取得した財産が、
・1億6千万
・配偶者の法定相続分
いずれかの多い金額までは、相続税がかからない制度のことを言います。
このように相続人の配偶者は、取得額が1億6千万までは相続税の支払いが免除されるということになります。
課税所得税が少ない一般人が配偶者控除を利用した場合、ほとんど相続税はかかってこないと言えるでしょう。
配偶者控除を受けるための4つの適用条件
次に非常にメリットがある配偶者控除を受けるための4つの適用条件について見ていきましょう。
相続人が戸籍上の配偶者であること
ここでいう配偶者は婚姻期間の規定や制限はないですが、戸籍上の配偶者である必要があります。
いわゆる内縁関係ではこの制度の適用を受けることができません。
亡くなる前日に結婚して婚姻届を出した場合でも、配偶者控除を適用することができます。
相続税の申告書を税務署に提出していくこと
ご自身で計算された金額が配偶者控除を使うことで0円になるケースも多いでしょう。
ここで支払うべき相続税がないのですから申告は必要ないと考える人も多いと考えますが、申告期限までに管轄の税務署に申告書の提出が必要です。
相続税の申告期限までに遺産分割協議が終わっている場合
相続税の配偶者控除の金額は、実際に取得した財産の金額を元に計算が行われます。
ですから、相続税の申告期限までに遺産分割が決まらない限りは原則配偶者控除は適用できないといった形になります。
遺産分割協議がうまくまとまらない時には、法定相続分で遺産を分割したとみなして、相続税の計算・申告納税を行いましょう。
他にも3年以内分割見込書を添付することで、遺産分割が確定したところで修正届けを提出するなりして配偶者控除の適用を受けることができます。
過少申告ではないこと
申告後に税務調査に入ることがありますが、仮装工作や隠蔽により遺産や相続税額を過少申告していた場合があります。
1,000万過少申告をしていたなどのケースも実際にありました。
そのケースでは、過少申告された分の1,000万円には相続税がかかるということになってきます。
ですから、ごまかしはしないようにしましょう。
配偶者控除を安易に使うと大損する
ここからは相続における非常に便利な制度である配偶者控除の注意点を例をあげていきますね。
配偶者控除を適用して相続税の申告を税務署に提出すると撤回はできません。
特例を使ったことにより、将来的に何千万円の損失があるとわかっていても、申告前の状態には戻すことはできません。
しかし、1億6千万まで課税対象にならないのなら、この制度は使った方がお得、相続税0円と相続に不慣れな税理士は申告してしまう場合もあります。
また、相続人の方も「今回は相続税が安く済んだ、よかった。」と安易に印鑑を申告書に押される方も多いのです。
しかし、この考え方はとても危険です。
この配偶者控除を安易に使った人で大損した人のお話をしましょう。
母親(財産9,600万円)が先に死亡して父親(財産1億円)と子供で母親の財産を相続することになりました。
ここで疑問に思った点なのですが、なぜ父親が母親の財産を相続して自分の財産を増やすようなことをしたかという点です。
まず普通に考えて大きな怪我や病気にあわない限りは、父親が先に亡くなりますよね。
また、お金がないなら話がわかりますが、財産をご自身でも1億円持っているということが気に掛かる点です。
子供が母親の財産を相続するときに払う額が、355万円、父親の財産を相続するときに払う額が2,780万円ということにもなります。
この家庭では相続に不慣れな税理士の提案によって1,000万円以上の損失が決まっています。
では一次相続においてどのように遺産分割を行えばよいのか考えてみましょう。
1番税金を抑える方法としては、9,600万円の母親の財産を子供が全て受け継ぐことが挙げられます。
1次相続で払う額は大きくなりますが、2次相続も含めるとかなりお得になります。
家族構成・両親、それぞれの財産状況によっては一次相続において安易に配偶者控除を使うと将来子供が支払う税金の額がとんでもなく高額になりかねません。
本当に相続専門の税理士ならば依頼主に損失を与えるような提案は絶対にしませんが、相続に不慣れな税理士はこのような判断をしかねないということでもありますね。
「相続の相談をするなら相続専門家チームへ」という記事もこちらにありますので、ご覧ください。
このように財産や家族構成によっては損をすることもありますので、ご注意ください。
配偶者控除をもっとも効率よく活用する方法
では、1億6,000万円の非課税制度である配偶者控除をもっとも効率よく利用する方法について、あるご家庭のケースでパターンを変えて考えていきましょう。
ケースモデルとしてAさん一家のケースをご紹介します。
Aさんを筆頭に、奥さんのB子さん、お子さまのC、Dがいたとします。
Aさんの財産は1億円で、奥さんの財産は0円です。
この家族では1次相続がいくらになるのか、2次相続が発生した場合に支払う相続税はいくらになるのか。
1次相続と2次相続の合計を見ることで、この家族ではどのパターンが相続税を安くすることができるのか考えていきましょう。
1次相続でB子さんが配偶者控除を使い全額相続した場合
Aさんの財産である1億円からこの家族では基礎控除額が4,800万(3,000万+600万×3)を引くと5,200万。
この家族にかかる相続税は630万程度になります。
しかし、配偶者が財産を相続する場合は相続する財産の額が法定相続分か、1億6,000万以下のどちらか大きい方の額までなら相続税はかかりません。
ですから、配偶者控除を使い、申告書を提出することで、1次相続では相続税は0円となります。
では、2次相続では1億円からこの家族では子供が2人しかいないので基礎控除額が4,200万(3,000万+600万×2)を引くと5,800万。
子供2人にかかる相続税は770万円になります。
C、D、それぞれが385万円の支払いが必要ということですね。
1次相続でB子さんが配偶者控除を使い法定相続分を相続した場合
1次相続でB子さんが配偶者控除を使い全額相続した場合と全体では同じ相続税630万円はかかってきます。
ここでB子さんは配偶者控除を使いますので、相続税は0円。
C、Dはそれぞれで157万5千円の相続税を支払うことになり、家族全体では315万円支払うことになります。
では、2次相続では5,000万円に対する家族全体の相続税は80万円で、これを子供2人で分けるので40万円ずつ相続税を支払うことになるでしょう。
1次相続で2次相続両方で支払う額は395万円となります。
1次相続でB子さんが配偶者控除を使わなかった場合
家族の相続全体での相続税額は変わらないので、相続税630万円はかかってくることはわかりますよね。
B子さんは4,200万円、C、Dはそれぞれが2,900万円相続することになります。
一次相続で払うべき相続税は計算は省略しますが、365万4千円になるのです。
そして2次相続で4200万円を相続することになるのですが、基礎控除額が4200万円なので、相続税は0円ということになります。
1次相続で2次相続両方で支払う額は365万4千円ということになります。
1次相続でB子さんが相続放棄をした場合
家族の相続全体での相続税額は変わらないので、相続税630万円はかかってくることはわかりますよね。
2次相続における相続税は0円ですので、申告も必要ないことになります。
母が配偶者控除を使い全額を相続 | 母が配偶者控除を使い法定相続分を相続 | 母が配偶者控除を使わない場合 | 母が相続放棄 |
770万円 | 395万円 | 365万4千円 | 630万 |
こちらの表を見る限りでは、母が配偶者控除を使い法定相続分を相続するのがお得でしたね。
配偶者控除は慎重に使いましょう
一次相続で配偶者や子供が相続する財産額を財産の種類も加味しつつ、もっと厳密に計算して遺産分割をしておけばさらに相続税を下げることができます。
このように配偶者控除を使ったことで、大損をする家族、得をする家族が出てきます。
得をするのか大損するのかは財産の種類や額、1次相続、ついで2次相続について考える必要があります。
第1次相続で配分を間違えれば大損をするということですので、ご自身で勝手に決めたり相続に不慣れな税理士に頼んだりということはやめましょう。
「相続に関するご依頼は相続専門チームへ」すると一番手っ取り早く、間違いなくことが済むと考えます。
お医者さんに専門があるように税理士にも専門があります。
相続専門の税理士から、1次相続・2次相続を含めた相続税の計算シミュレーションを提示してもらった上で家族全員で納得するまで話し合い、それから配偶者控除は慎重に使いましょう。
たまに2次相続まで考えるなら別料金を取らせてもらいますというような悪徳営業をしている税理士もいますので、ご注意ください。
相続専門の税理士ならば、1次相続で間違えるとお客様に大損をさせるわけですから、2次相続まで考えたプランを提案するのが通常業務だと考えます。
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