「相続が決まってお葬式費用を亡くなった人の預貯金口座から出そうとしたら、預貯金口座がいきなり凍結してしまった。」
「夫に万が一のことがあるといけないから、妻の口座に事前にうつしておいた方がいいのではないだろうか。」
こういった悩みは少なくはないでしょう。
人が亡くなると色々なお金が必要なことから、困る人も多いですよね。
一般的には亡くなった人が街の著名人であったり、亡くなったことが新聞などに載ったり、ご家族が自ら伝えてしまった、銀行員がたまたま亡くなったことを知ったなどといったことが無ければ、預貯金口座は凍結しません。
そもそも民間機関である銀行に対して市区町村などの公的機関がいちいち死亡したことを報告することはありません。
しかし、万が一亡くなった人の預貯金口座が凍結された場合は、手続きを行うことで引き出すことも可能です。
ちなみに亡くなった人の預貯金口座が凍結されることは決して悪いことではなくて、良いこともあります。
例えば、お金にがめつい人が相続人にいてキャッシュカードの暗証番号、亡くなった人の通帳や印鑑などを持っていると、使い込んでしまう可能性もあるからです。
ですが、通常預貯金口座が凍結すると困る方がほとんどでしょう。
100万単位のお葬式費用を一括で気軽に出せる方もそう多くはないのが世の中の現実です。
最近は家族葬なので費用を抑えるお葬式も増えてきましたが、普通のタイプのお葬式であればそれぐらいの巨額はかかりますよね。
今回は預貯金口座が凍結されてしまってお葬式費用が払えないなど金銭的に困った方に対して、亡くなった人の預金口座の凍結解除の手続きについて詳しく解説していきます。
この記事は相続専門の税理士にインタビューして書いた記事ですので、情報は最新のものとなっています。
ぜひ最後までご覧ください。
預貯金の凍結解除の手続きに必要な書類は?手続きについてもご紹介!
亡くなった人の預貯金が凍結された場合の必要書類には何があるのでしょうか。
また、どういった手続きを実際していくのかもあわせてご紹介します。
預貯金口座の凍結解除に必要な書類とは
亡くなった人の預貯金口座の凍結解除に必要な書類は金融機関によって異なるのが現状です。
しかし、ある程度のところは決まっています。
一例を示しましょう。
・亡くなった人の戸籍謄本と除籍謄本
・相続人の戸籍謄本
・遺言書
・遺産分割協議書
・相続人の印鑑証明書
こういったものになります。
これはあくまで一例ですので、必ず金融機関のホームページを見るか、事前に金融機関にお問合せするなどして預貯金口座の凍結解除に必要な書類を確認しておくことが最善の策でしょう。
遺産分割協議書を出すということは、相続人全ての話し合いが固まっている必要がありますよね。
また、亡くなった人の預貯金口座の凍結解除をするためには、銀行所定の相続届に相続人全員が署名をして実印を押印して、印鑑証明書を提出する必要性もありますので、相続人全員から同意を得る必要があります。
亡くなった人の戸籍謄本は、生まれてから亡くなるまで全ての戸籍謄本を集める必要性があるので、注意しましょう。
「戸籍謄本は1通取ればいいだけでしょう」と言う方がいますが、戸籍謄本は本籍地が変わったり結婚したり法律上の様式が変わったりすると新たに作成されます。
ですから、通常最低でも4通以上の戸籍謄本を収集していく必要になります。
年齢が高かったり結婚や養子縁組だったり身分関係が変わっていると、さらに戸籍謄本は多くなるでしょう。
なぜこのように生まれてから亡くなるまで全ての戸籍謄本を集める必要性があるのでしょうか考えてみましょう。
戸籍が新たに作成されると、その前の戸籍には情報が全て引き継がれていきません。
前妻との間に子供がいた場合は、亡くなった時の戸籍謄本には子供がいたことは記載されていないのです。
すなわち、亡くなった方の相続人を証明するには、古い戸籍を全て揃える必要があります。
本籍地が遠かったり色々な場所に本籍地を変更していくと、集めるだけでもとても大変です。
このように亡くなった人の銀行口座の凍結を解除するのはとても面倒だと言えるでしょう。
預貯金口座の凍結解除に必要な手続き
預貯金口座の凍結解除に必要な手続きの流れをわかりやすくまとめました。
STEP1 必要な申請用紙はあるのか金融機関にて確認
STEP2 金融機関で手続き・提出
STEP3 ある程度の日数がかかる
STEP4 多くの口座がある場合は効率よく手続きをする必要性がある
ここで出てくるのが、相続の際に使える便利な書類「法定相続情報一覧図」。
預貯金の凍結解除の手続きに使える便利な書類は?手続きについてもご紹介!
預貯金の凍結解除の手続きに使える便利な書類「法定相続情報一覧図」をご紹介します。
便利な書類を取得する手続きについても紹介するので、実際に相続となった場合は作成してみるのも良いですね。
相続の際に使える便利な書類をご紹介
相続人の戸籍謄本は、法定相続情報一覧図でも良い場合もあります。
法定相続情報一覧図とは、平成29年度からはじまった法定相続情報証明制度という制度によって、亡くなった人と相続人の戸籍謄本などの情報を1つの情報にまとめて相続の簡略化を図ることができるといった便利な書類です。
法定相続情報一覧図には
・亡くなった方の戸籍謄本
・亡くなった方の除籍謄本
・相続人の戸籍謄本
・住民票の除票
といったこれらを代表とした情報が入っています。
ここで法定相続情報一覧図があることによってどれぐらい便利になったかを解説します。
相続には、
・亡くなった方の戸籍謄本
・亡くなった方の除籍謄本
・相続人の戸籍謄本
が必要不可欠です。
これらの書類を相続税申告の時や、不動産の登記の時、預金口座凍結解除を行う際金融機関に提出する時など、さまざまなシーンで書類を出す先ごとに同じ書類、しかも原本が何部も必要となります。
その上、戸籍謄本は一部450円程することが多いです。
ですから、この戸籍謄本の原本を提出先の数だけ亡くなった人と相続人全員の分だけ取るとなるとかなりの出費になります。
預金口座凍結解除手続きの場合ですと、手続きが終われば戸籍謄本の原本を返してもらえます。
その返却された戸籍謄本の原本を使って、次の預金口座凍結解除手続きを行えば良いと考える方も出てくるでしょうが、一件ずつ全ての銀行で手続きを処理するのに日数がかかります。
そうなると、全ての凍結された預金口座を解除するには、かなりの日数がかかるでしょう。
そこで出てくるのが、法定相続情報一覧図です。
法定相続情報一覧図は戸籍謄本と異なり、原本ではなく写しでもきちんと手続きができてしまいます。
また、法定相続情報一覧図は一度作成してしまえば、相続人の戸籍が変わるまでその写しを無料で何部でも発行可能です。
今後は手数料がかかったりすることもあるかもしれませんが、今のところ無料ですので、作っておいて損はないかと考えます。
法定相続情報一覧図の取得の仕方
まず、法定相続情報一覧図の作成には、亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本、及び亡くなった方の除籍謄本、相続人全員の戸籍謄本が必要となります。
戸籍謄本はそれぞれの本籍地の戸籍謄本で、住民票の除票は住所地の市役所で入手します。
集めた書類を元に法定相続情報一覧図を自分で作成し、他の書類と合わせて法務局に持ち込みます。
それから、法定相続情報一覧図の写しを発行します。
法定相続情報一覧図は、法務局で5年間保管され、発行も無料です。
毎回発行するのも手間になるので、最初に必要な枚数以上を発行しておきたいですね。
相続する日までの対策
相続する日は突然やってきます。
ですから、まめに両親と連絡をとっておくなどすることで、通帳がどこにいった、キャッシュカードがどこにいったなどのトラブルを回避することも可能です。
現在は法律が改正され、一定の割合の預金までは相続人全員の同意がなくとも、預金が相続人の1人から引き出せることになりました。
この改正された法律では、自分の法律上の相続分の3分の1までを他の相続人の同意なく引き出しできます。
ただし、1つの金融機関で引き出すことができる上限金額が決まっていて、150万円までとなっているので注意しましょう。
例えば預金1200万円を遺して旦那が亡くなり、子供が2人いたとします。
妻が単独で払い戻しできる金額は、預金1200万円×3分の1×法定相続分2分の1 =200万円となります。
しかし、200万という数字は上限金額を超えています。
ですから、この場合では、150万円までしか引き出すことができません。
この制度は一見便利なように見えますが、亡くなった人の戸籍を全て集める必要があります。
すなわち、相続人の話し合いがまとまりそうな場合にはこの制度を使うと、とりあえずはお金を引き出すことができるということですね。
ただし、1つの金融期間だけでは150万円からしか引き出せないので、お葬式費用など足りないこともあるでしょう。
ではどうすればよいのか考えてみましょう。
例えば、事前に誰かの口座で保管しておくことなどが解決策として挙げられます。
亡くなった人の介護などをしている場合は、生前から預かっておくこともあって良いでしょう。
また、お葬式費用などの多額の資金を確保する方法として、生命保険金でお金を遺しておくことも良いかもしれません。
生命保険金は、受取人だけで受け取れるので簡単かもしれません。
既に相続が発生している場合は専門家に頼んだ方が、楽で日にちはかからないでしょう。
1ヶ月もあれば戸籍収集は可能かと思いますが、仕事を現役でしている人が自分で戸籍収集するには大変な労力を有します。
司法書士は戸籍を見ることにだけは他職種の士業の方より長けているといっても過言ではないので、司法書士に戸籍収集を依頼しても良いですね。
司法書士に依頼するメリットについてはこちらの記事をご覧ください。